【中立解説】『ゴーストオブヨウテイ』篤のモデル、イシイエリカと「アンティファ支持」の真相【違法組織?】
この記事の目次
『Ghost of Yōtei』主人公「篤」のモデル、イシイエリカ氏の政治的スタンス
PlayStation 5の話題作『Ghost of Yōtei(ゴーストオブヨウテイ)』で、主人公「篤(アツ)」の声を担当し、モーションキャプチャも務めたイシイエリカ(Erika Ishii)氏の政治的スタンスは、一部のゲームコミュニティ、特に政治的保守層の間で大きな議論の的となっています。
「反ファシスト」としてのイシイエリカ氏
複数の報道やイシイ氏自身の公の場での発言に基づくと、彼女は公然と「反ファシスト(antifascist)」であることを表明しています。
- 積極的な政治的主張: イシイ氏は、自身の性的指向(クィア、バイセクシュアル、ジェンダーフルイドであると公言)や政治的見解をオープンにすることで知られています。彼女は、トランスフォビアへの反対運動に積極的に参加したり、LGBTQを支援する慈善団体への募金活動を行ったりするなど、社会的なテーマについて積極的に発言しています。
- 「アンティファ支持」報道: Slate Magazineなどの報道では、イシイ氏が「outspokenly antifascist(公然と反ファシストである)」と述べられており、一部のオンラインコミュニティでは、これを「アンティファ(Antifa)支持」と見なして批判の対象となっています。
- 文脈の重要性: ここで重要なのは、イシイ氏が自身を「反ファシスト」として表現している点です。「反ファシスト」は広範な政治的イデオロギーであり、極右やファシズムに反対する全ての人々を含む概念です。このイデオロギーを持つ人が特定のグループを支持するかどうかは、一律には判断できません。しかし、彼女の活動は、人種差別や差別的な運動に反対する、進歩的な政治的立ち位置に強く根ざしていることは明白です。
篤というキャラクターへの影響をめぐる論争
イシイ氏の政治的スタンスは、ゲーム『Ghost of Yōtei』のキャラクターである篤の描写にも結びつけて批判されることがあります。
一部の保守的なゲームコミュニティからは、イシイ氏の起用や、キャラクターの描写が「ウォーク(Woke)」であるとして、ゲームのボイコットを呼びかける動きも見られました。これは、ゲームの世界観や物語が、制作者や出演者の政治的思想によって不当に影響を受けているという懸念に基づくものです。しかし、ゲームの評価自体は高く、イシイ氏の演技がキャラクターの複雑な感情(特に復讐の代償と内なる葛藤)を見事に表現している点については、広く評価されています。
アンティファ(Antifa)とは何か?その違法性と法的地位
イシイ氏が公言する「反ファシズム」の思想と関連付けられる「アンティファ(Antifa)」は、アメリカにおいて非常に論争の的となっている運動です。その法的地位や違法性について、正確な理解が必要です。
1. アンティファの定義と特徴
「アンティファ」は、「Anti-Fascist(反ファシスト)」の略であり、特定の組織や団体ではありません。これは、極右やファシズムに反対する、世界中の多様な個人や緩やかなグループの集合体、あるいは運動を指す用語です。
主に左派、アナーキスト、社会主義者などの幅広い思想的背景を持つ人々で構成され、人種差別、性差別、ファシズムなどに反対しています。
2. アンティファの違法性に関する議論(アメリカ)
アンティファの一部には、その行動がしばしば暴力や破壊行為を伴うため、特に保守派から強い批判を受け、その違法性が議論されてきました。
- 「国内テロ組織」指定の動き: 2025年9月、ドナルド・トランプ大統領(再任)は、大統領令に署名し、アンティファを「国内テロ組織(domestic terrorist organization)」に指定すると発表しました。大統領令では、アンティファを「米国政府の転覆を公然と要求する、軍国主義的でアナーキーな企業」であり、「暴力とテロリズムの全国的なキャンペーン」を実行していると断じています。
- 法的効力の不明確さ: しかし、この大統領令には法的な有効性がないとする専門家も多くいます。アメリカの連邦法には、国内のテロ組織を公式に指定し、処罰する法律が存在しないためです。テロ組織の指定は、通常、外国のテロ組織に対して適用されるものであり、イデオロギーそのものを処罰することは憲法上の「表現の自由」に抵触する可能性があります。
- 個人の刑事責任: アンティファの行動に関連して発生する暴動、器物損壊、暴行などの具体的な犯罪行為は、当然ながら現行の刑法に基づき、個人またはグループとして逮捕・起訴の対象となります。つまり、運動全体が違法組織として禁じられているわけではなく、違法行為を行った個人が罰せられるという構造です。
3. 日本におけるアンティファの法的地位
日本において「アンティファ」を特定の組織として規制する法律や、テロ組織として指定する政府の公式な動きはありません。日本国内でのアンティファ的な活動は、デモや抗議活動として行われることが主ですが、仮にその活動が暴行や公務執行妨害、破壊行為などの刑法に抵触した場合は、アメリカと同様に行為を行った個人が刑事責任を問われることになります。
まとめ:中立的な視点
イシイエリカ氏が「反ファシスト」であることは事実であり、彼女の進歩的な政治的スタンスはオープンにされています。このスタンスを一部のコミュニティが「アンティファ支持」と解釈し、ゲームを批判しているのが現状です。
一方で、イシイエリカ氏が特定の組織に属していることが発覚したわけでも、逮捕歴があるわけでもありません。ただ単に反差別やLGBTQ+の権利を主張しているに過ぎないのです。
参考文献
- Ghost of Yotei: Why Gamergate is attacking one of 2025’s best video games. – Slate Magazine – イシイエリカ氏が「outspokenly antifascist」であること、およびゲームへの批判について解説した記事。
- Erika Ishii – Wikipedia – イシイエリカ氏の個人的な生活と政治的見解に関する情報。
- Trump’s move to label antifa a “domestic terrorist organization” likely to face legal hurdles: “You can’t prosecute an ideology” – CBS News – アンティファの「国内テロ組織」指定の法的課題について論じた記事。
- Designating Antifa as a Domestic Terrorist Organization – The White House – 2025年9月の大統領令に関するホワイトハウスの資料。
- Antifa | Definition, Etymology, History, Charlottesville, Criticisms, & Facts | Britannica – アンティファの定義、歴史、戦術に関する解説。

