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投稿日:2024年07月11日更新日:2024年07月25日

『アサシンクリードシャドウズ発売中止署名運動』はほとんど言い掛かりである

今話題になっている『アサシンクリードシャドウズ発売中止署名運動』について話していきたいと思います。

最初に言っておきますが、私はアサクリファンではありません(1作目だけプレイ済みですが、イマイチ楽しめず序盤でプレイを止めています)。

また、『UBI = PV詐欺の多いメーカー』というイメージがあるので、あまり良い印象も持っていません。

その上で言わせてもらいますが、今起きている『アサシンクリードシャドウズ発売中止署名運動』の内容はほとんど言い掛かりであるというのが私の見解です。

『アサシンクリードシャドウズ発売中止署名運動』の内容

署名運動発起人Shimizu Toru氏の主張を要約すると、「アサシンクリードシャドウズを開発・販売しているUBIは、歴史正確性と文化的敬意に欠け、これは日本への侮辱であり、アジア人差別に繋がる。なので早急に発売中止すべき。」というものです。

ただ、これは発起人であるShimizu Toru氏の主観・憶測・私的感情に基づいたものなんですよね。

この点を解説していきます。

事実:UBIはアサシンクリードシャドウズはフィクションであることを明言しているし、「史実に忠実」とも言ってない

まず、署名運動発起人のShimizu氏は「歴史正確性と文化的敬意に欠ける」と言っている件についてですが、署名運動開始前からUBIは「アサシンクリードシャドウズはフィクションである」と明言しています。

https://jp.ign.com/assassins-creed-codename-red/75212/interview/

フィクションなので歴史正確性に欠けるのは当たり前ですし、文化的敬意に欠けるというのはShimizu氏のそう思っているだけに過ぎません。開発者一同、最大限日本をリスペクトして制作した可能性だってあるわけです(数年間という長い期間を開発に費やすなんてリスペクトが無ければ出来ないと思います)。

署名人の中には「フィクションなら許せる」と言ってる人も多かったのですが、前述したようにUBIはフィクションだと明言しているわけです。キチンと情報を精査しないで感情に流されて署名している人もかなり多いように見受けられますね。

陰謀論に染まる人も多数・・・

また、「UBIは史実に忠実に作ったと嘘を付き、日本の歴史を捏造しようとしている!」という陰謀論めいたことを主張する人がかなり多い印象でした。

極め付けには「日本は首切りが日常的にエンターテインメントとして行われ、切腹を強要していた野蛮な民族」といった主張まであります。

少し考えれば、世界的企業が公に「(日本人は)野蛮な民族」などという発言をするわけがないことは明白なわけです。

他にも、ソースも提示せず「UBI開発者が当時8000人ものアフリカ系武士がいたと主張」、「批判された結果、”アサクリシャドウズの日本ではなくミャンマーが舞台”とUBIが主張」などと発言する人も見受けられます(いずれもUBIがそのような主張をしたという証拠はありません)。

このように誇張して悪評を広める行為は、明確に企業に対する名誉棄損に該当します。

また、署名運動に便乗して「黒人・白人が嫌いになった」「白人は謝らない」などとあからさまなヘイトスピーチをする人も目立ちますね(こういう人に署名運動をする資格は無いです)。

「黒人侍が日本人を惨殺していく様は見るに堪えません」という一文も意味が分からないですね。前述したようにこれはフィクションです。日本人が外国人を殺害する作品だって無数にあるわけで、それを言い出したら創作の自由が無くなりますよね。

また、この署名運動でよく取り上げられるのが『史実に忠実に作った』というキーワード。

おそらく下記の事を言ってるのだと思いますが、そんなことUBIは言っていないんですよね。

We’re showing real historical figures, such as Oda Nobunaga and a lot of events that happened during that time, so you’re not only playing in feudal Japan, but learning about this fantastic time period.

織田信長などの実在の歴史上の人物や、その時代に起こった多くの出来事を描いています。そのため、封建時代の日本でプレイするだけでなく、この素晴らしい時代について学ぶことができます。

https://news.xbox.com/en-us/2024/05/15/assassins-creed-shadows-interview/

『多くの史実を取り入れた作品』と言ってるだけで、『史実だけで構成された作品』とは言っていません。歴史ファンタジーだって『多くの史実を取り入れた作品』と言えますからね。

そもそも、アサクリシリーズを知っている人であれば、『史実を随所に散りばめたフィクション』であることは分かるんですよね。

それに、アサシンクリード(に限らずほとんどの作品)には、ゲーム冒頭に「この作品はフィクションです」といった注意書きが入るので、『史実に忠実』などと主張しているなんてことはあり得ないのです。

事実: 弥助がサムライかどうかは詳しくは分かっていない

アサシンクリードシャドウズの主人公の1人である、『弥助』の設定が一番炎上している部分だと思いますが、弥助に関する史実はほとんどが不明です。

「ただの小間使いだった」と主張する人も多いですが、確証があるわけでもありません。資料が無いだけでサムライだった可能性もあるわけです。

ですから、そこは表現の自由として弥助が”伝説のサムライ”でも問題無いのです。実際、弥助がサムライとして登場する作品は多数存在するわけですしね。

産経新聞ですら『弥助=サムライ』として紹介

2023年3月の保守派メディア『産経新聞』の記事では、弥助を「16世紀の日本で織田信長の家臣となった黒人のサムライとして知られる」と紹介しています。

日本の保守派メディアですら『弥助=サムライ』という認識である以上、フランス企業のUBIが同じ認識なのは当然でしょう。

これを歴史捏造などと騒ぐなら、まずは産経新聞に矛先を向けるべきだと思います。創作物であるアサクリと違って、報道機関である産経新聞はフィクションを報じることは許されないわけですからね(朝日新聞は慰安婦問題で同じ事をやってバッシングされました)。

フィクションでも歴史誤認は広まる理由

少し横道にそれますが、歴史誤認を問題視するのであれば、歴史フィクションも問題になるのではないでしょうか?

『ゴーストオブツシマ』、『ライズオブローニン』、『仁王』といったタイトルも史実をモチーフにしたフィクションですが、「どこからどこまでが史実で、どこからどこまでがフィクションなのかは明記されていない」のです。

つまり、日本史に詳しくない人からすれば、ゴーストオブツシマの『境井仁』が実在する人物だと誤認される可能性も十分あるわけです。

ライズオブローニンにおける『隠し刀』と呼ばれる特殊部隊もそうです。ただでさえ、サムライやニンジャを過剰に美化する外国人は多いので、存在するものと考える人は少なくないでしょう。

仁王はファンタジー要素が強い作品ですが、話の流れとしては史実をベースにしているので、これもやはり歴史に詳しくない人からすれば、やはりファンタジー要素以外の部分は史実であると認識してしまう可能性がありますよね。

つまり、フィクションであっても誤った歴史観が拡散される可能性は否定できないということです。そもそも、海外に広がっている『トンデモ日本史感』は数々のフィクション作品が原因でしょうからね。しかし、そんなことを言い出したら創作の自由は無くなってしまう事でしょう。

日本のイメージを下げるものでなければ、過剰に騒ぎ立てるのはオカシイ

例えば、「日本人が黒人を虐殺していた」というような日本人のイメージを大きく損なうようなデマであれば抗議すべきですし、国際問題になってもおかしくないです。

しかし、弥助がサムライだとして、日本のイメージ低下に繋がるのでしょうか?

私はそうは思いませんし、史実として弥助がどういう人物なのかは判明していない以上、そこはクリエイターの創作に委ねる部分でしかないわけです。弥助をただの「小間使い」として描けば、それはそれで良く思わない人だっているでしょうからね。

もし、「黒人のサムライが存在することは、日本にとって不名誉なことだ」と考えているのであれば、それは黒人に対する人種差別他なりません。

また、署名運動発起人は「皆様から頂いた署名の提出先機関(文化庁、外務省、フランス大使館、カナダ大使館)を検討しています。」と発言していますが、明らかに過剰反応なんですよね。

主観・憶測・私情で外務省や大使館は動きませんし、これがキッカケで世界的なボイコットが起こり、売り上げに大きな影響出れば、巨額の損害賠償を請求されてもおかしくないんですよね。

なので、抗議をするのであれば主観・憶測・私情は控え、事実だけを主張すべきです。

仮に、この件でUBIから謝罪があったとしても「誤解を招く表現があった」程度に留まるでしょう。発売中止は十中八九無いと言えます。なぜなら、ゲーム開始時に「この作品はフィクションです」の表示がされるはずなので、本来必要なメーカーの義務は果たしているからです。

発売中止に追い込みたいのであれば、ボイコットする側が相応の証拠を集めて提示する義務があります。

なお、この署名運動を見ていて思ったのですが、あれこれ主張している割には「UBIがどういう発言をしたか」というソースを出していないんですよね。先述した『史実に忠実』という表現もそうですし、さらには「UBIはノンフィクションだと主張している!」と騒ぐ人もいます。けどソース無しです。ふわっとした情報でボイコットしても言い掛かりを付けているようにしか見えないのです。

2017年頃、『大量懲戒請求問題』が起きましたが、今回の件はそれに近しい騒動に思えます。『大量懲戒請求問題』はいわゆる”ネトウヨ”が不確かな情報を信じ込み、弁護士に対して大量の懲戒請求をした問題です。多くのネトウヨが裁判に負け、損害賠償支払い命令が出ています。

今回の騒動も、どちらかと言うとネトウヨ寄りの層を中心に、ある事ない事ごちゃ混ぜにして騒いでいるので、同じ道を辿る可能性は十分あると思います。

余談:アサクリシャドウズ コンセプトアートに日本の団体の著作物を無断使用し炎上・謝罪

蛇足になりますが、先日、アサシンクリードシャドウズのコンセプトアートに、日本の団体の著作物が無断使用されたことで炎上しました。

こういった誰の目から見ても明らかに問題のある行為は批判されるべきですし、これについてUBIを擁護する人はまずいないでしょう。

また、UBI側も団体に謝罪の場を作ってもらって謝罪しています。

事実を提示し客観的に問題性が認められれば、UBIも認めざるを得ないわけです。逆に、主観・憶測・私情によるボイコットは最悪偽計業務妨害罪に問われかねないということを頭の片隅に置いておくべきでしょう。

追記:UBIは被害者だと判明。騒動の黒幕とも言えるトーマス・ロックリーとは?

UBIがアサクリシャドウズを制作するに当たり、参考にしたと言われているのが、こちらのトーマス・ロックリーの著書『信長と弥助』です。

この書籍の著者トーマス・ロックリー氏が騒動の黒幕と言われている理由が、この書籍の扱いにあります。

これがフィクション(創作)であれば何の問題も無かったのですが、Amazonの紹介文には『歴史ノンフィクション』の表記がされているのです。

『史実をモチーフにしたフィクション』という表記のあるアサクリとは違い、この書籍はフィクション性を否定しているんですよね。つまり、史実ではない事が書かれているなら嘘を付いていることになるわけです。

さらには著者であるトーマス・ロックリー氏は、

  • 日本大学法学部准教授
  • 元ロンドン大学東洋アフリカ学院客員研究員

という肩書を持っていることや、

  • 日本で発売されて7年以上、大した指摘が無かった
  • NHKの特番『Black Samurai ~信長に仕えたアフリカン侍・弥助~』にトーマス・ロックリー氏が出演
  • トーマス・ロックリー氏は複数メディアにも出演するも批判的な声はほぼ無い
  • 数多くのメディアが弥助=サムライとして報じている

というのが現実で、こうなるとUBIがトーマス・ロックリー氏が嘘を付いているとは疑う余地は無かったはずです。実際、今回の騒動が起こるまでは日本人の多くがトーマス・ロックリー氏を疑わなかったわけです。

公には弥助に関する事はほとんど分かっていないので、トーマス・ロックリーの著書に書かれたことが嘘か事実か確認する術が無いのですが、もし嘘だとすればUBIも日本人も同じ被害者という事になります。

根本的な原因。国の管理体制が杜撰過ぎるのでは?

トーマス・ロックリー氏の著書について思ったのが、国の管理体制の杜撰さですね。

”ノンフィクション”を謡っている歴史書籍を、7年以上も国が見過ごしているのは、危機管理が甘過ぎると思うんですよね。

今回は、アサクリという人気シリーズに、ポリコレアレルギーの人が火をつけたことで発覚しましたが、そうでも無ければ明るみにならなかったわけです。

もしかしたら、他にも既にノンフィクションを謡っている書籍にデマが書かれていて、それが史実として受け入れられている可能性もあるわけですよね。

アサクリのようなフィクションを謡っている作品まで国が検閲する必要は無いと思いますが、ノンフィクションやドキュメンタリーを謡っている作品は国が検閲すべきだと思います。

決着:UBIがグローバルアカウントで謝罪。アサクリ騒動は終了か?

7月23日、UBIがグローバルアカウントで本騒動に対する謝罪を行いました。

また、発売日までに内容の改善に努める事と、弥助が侍であることには議論の余地がある事を認めました。

このタイミングでの謝罪となった理由としては、おそらくトーマス・ロックリーの信用性を調査するのに時間を要したからだと思います。先述したようにトーマス・ロックリー氏は信用性のある肩書持ち、各メディアにも出演する著名人なので、情報の真偽を確認する前に謝罪してしまったら別の問題が起きてしまいますからね。

これでUBI側の問題としては全て解決のはずですが、一部不満を漏らしている人がいるようです。

一つは日本語版と英語版で文章が違うというものです。

「議論の的になっている」「議論の余地がある」この表現の違いに、「UBIは反省していない!」と騒ぎ立てていますが、翻訳の誤差レベルでしかない事は明白です(ちなみにDeepLで翻訳すると”議論や論点の問題である”となり、より日本語版に近い表現となります)。

そもそも、先述したように弥助に関する情報はほとんど残っていない為、弥助が侍なのかそうでないかは不明なのです。だからこそ、議論の余地が生まれ、本騒動以前から弥助が侍として描かれた作品が数多く存在したり、メディアでも弥助を侍として紹介するケースがあるわけです。

驚くことに上記投稿には1万以上の『いいね』が付いているんですよね。情報を精査しないで鵜呑みにしてしまう人がこれだけいるという事実に落胆してしまいます。

ちなみに、この投稿を真に受けて「アサクリ運営はレイシスト」と言い出す人も表れました…。

また、弥助はどうでも良くて、「日本に対する敬意が無い、バカにしている」といってUBIをバッシングする人もいます。

しかしそれは、あくまで『そう感じただけ』の話でしかありません。

言ってしまえば、日本リスペクトの代表格とも言えるゴーストオブツシマも、捉え方によっては敬意が無いと受け取ることも出来ますからね(同作品は”誉れ”を捨てて戦う姿を描いた作品ですが、それを”侍の精神性の否定”と受け取る人は少なからずいるはずです)。

私は日本をモチーフにした海外作品はいくつも見てきていますが、アサクリシャドウズはその中でも上位に入るぐらいの高い再現度だと思います。むしろ、この上を行く作品はゴーストオブツシマぐらいしかないと思います。だから、制作者は十分日本に敬意をもって作っていると私は感じました。

一度振り上げてしまった拳のもって行き場がないのは分かりますが、ここまでイチャモン付けると惨めになるだけだと思います。

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