東京・新宿区のタワーマンションで平沢俊乃さん(25)がナイフでめった刺しにされ、殺害された事件ですが、世論の異常さというか危うさが露見していると感じたので私見を述べたいと思います。
この記事の目次
タワマン殺人事件の概要
この殺人事件の犯人である和久井学容疑者(51)は、被害女性である平沢俊乃さんとは以前まで交際関係だったようです(容疑者の父親が証言)。
和久井容疑者は平沢さんが経営するガールズバーに多額の支援をしてきたそうですが、結婚の誠意を見せるために愛車NSXを売却するなどして資金を工面したようです。その資金を平沢さんに渡した矢先に破局されてしまったとのことです(2022年)。
和久井学容疑者は「渡した金を返せ!」と執拗に付きまとい、ストーカー規制法により逮捕されています(2022年)。
そして、これが今回のタワマン殺人事件に繋がるわけです。
世間は殺人犯を擁護し、被害者を頂き女子・詐欺師呼ばわり。「死んで当然」という声も・・・
この事件に対する世論の声は、殺人犯である和久井容疑者を擁護し、被害者である平沢さんを詐欺師呼ばわりするような声が多いです。中には「死んで当然」いった過激な物も多く見かけます。
たしかに、5月9日時点で明かされてる情報だけでは、そういう考えになる人がいるのも頷けます。
しかし、世論は重大な事実を見落としています。
それは、現時点では犯人側の供述しか出ていないという事です。
犯人が自分にとって都合の悪い部分は隠しているかも知れないですし、そもそも事実とは全く異なる可能性もあるわけです。
犯人の供述だけを鵜呑みにして、被害者を詐欺師呼ばわりすることは絶対に許されない事です。もし、事実は違っていたら責任を取れるのでしょうか?
被害者遺族からすれば、娘を二度殺されるようなものです。
被害者が非難されていいのは、被害者の加害性が客観的事実として認められた場合だけです。
他にも、推測を事実であるかのように拡散する人多数
被害者を詐欺師扱いしたり「死んで当然」とまではいかずとも、憶測で被害者に問題があるかのような主張をする人は多くいます。
平沢俊乃:クラブをオープン
↓
平沢俊乃:金をせびる
↓
和久井学:お店を成功させて結婚するために超レアな車とバイクを売って1000万円以上渡す
↓
平沢俊乃:さらに金をせびる
↓
和久井学:消費者金融に700万円借りて平沢俊乃に渡す
↓
和久井学:騙されたと気付き、返金を要求
↓…— Masa (@masanews3) May 10, 2024
例の結婚詐欺女が刺された事件、そりゃ被害者のおっさんは「そうするしかない」よなあ
大事にしてた車もバイクも売ってその金持ち逃げされて、取り戻そうと動いたら警察は女の「あいつストーカーです」って訴えだけを無条件に聞いてそしたらもう刺すしかないじゃん
警察すら助けてくれないんだもん— 夏原智慧 (@chikei_n) May 9, 2024
『金をせびる』という表現を使っていますが、和久井容疑者が勝手に入れ込んで貢いだだけの可能性もあるわけです。『騙された』というのも警察への供述とは異なります。和久井容疑者は「応援する為に金銭を渡した」と供述しているので、『騙された』のではなく『期待する結果と違った』だけなんですよね。
『金を持ち逃げした』というのも、和久井容疑者のストーカー行為がエスカレートしてきた時期と重なっただけという見方も出来るわけです。そもそも、貢がせるなら出禁にしない方が店の利益になるわけです。
資金援助を受けて結婚を断っても詐欺になるとは限らない
また、「資金援助を受けたのに結婚しないのは詐欺だ!」という意見があります。でもそれは必ずしもそうとは言えません。
和久井容疑者がどういう意図・過程で資金援助をしてきたのか不明だからです。
『資金援助するから結婚して欲しい』と契約したのであれば、結婚しなければ契約違反となり詐欺と見なされる可能性もありますが、『好きだから応援したい』と自発的に支援をしてきたなら平沢さんには責任は無いでしょう。
また、一般の男女でも結婚直前になって破局してしまうケースは多々あるわけですから、世間が言うような「金だけ貰ってサヨナラ」があったとは限りません。お金を渡してから別件でひと悶着あって、それが破局の原因になるケースも当然あるわけですよね。
続報:2人に『交際形跡なし』とのこと
警視庁の調べによると、和久井学容疑者と平沢俊乃さんが交際していた形跡は確認出来なかったようです。和久井容疑者が一方的に平沢さんに好意を寄せてた可能性があるとしています。
「結婚前提」供述も交際の形跡なし 容疑者、一方的に好意か 東京新宿の女性刺殺・警視庁
こうなると、世間が被害者を結婚詐欺師呼ばわりしてきた事も、辻褄が合わなくなりますよね。
交際の事実が無いのであれば、和久井容疑者が妄想で「付き合っている」、「結婚の約束をした」と言ってることになるわけです。
そもそも、交際や結婚の話は和久井容疑者の父親が言ってるだけなんですよね。
和久井容疑者に虚言癖があるのであれば、冒頭で世論が言っているような被害者側の加害性が全く存在しない可能性も出てきます。
夜の遊び方を知らない人が、身の丈に合わない遊びをして破滅し、逆恨みにより殺人に走ったという見方も出てくるわけですよね。
事実と推測を混ぜたらダメ
本件の世論の声を見ると、事実では無いことを事実だと思い込んでいる人がかなり多い印象を受けました。
この事件について確定している事実は、
- 和久井容疑者が平沢さんを滅多刺しにして殺害
- 和久井容疑者は平沢さんのお店に通い詰めていた
- 和久井容疑者は『応援の為』と言って1000万円を平沢さんに渡した
- 平沢さんは『前払い金』として1000万円を受け取った(おそらく店の売上として計上する為)
- 和久井容疑者はストーカー容疑で逮捕される
- 和久井容疑者は1000万円の返金を要求し、警察にも相談した(ただし、騙されたわけではなく『応援の為』と自分の意思で渡しているので返金の義務はない)
- 「交際している」「結婚の予定」というのは和久井容疑者の父親が言っているだけ
といった感じです。
この判明している事実から分かる事は、平沢さんが詐欺をしたという裏付けが無く、むしろその可能性はかなり低いという事です。
無論、1000万円を返金していれば殺人は起きなかった可能性が高いですが、『応援の為』と渡された物に返金の義務は無いのです。
SNSで言われている『結婚詐欺』というのは和久井容疑者の父親による一方的な発言が元となっているので、事実ではなく推測でしかないのです。
この事件について、元夜職系Vtuber金美館通りの藤村さんによる冷静な分析が参考になります。
繰り返しになりますが、犯人の供述だけを鵜呑みにして、被害者を詐欺師呼ばわりするのは絶対にやめるべきです。
憶測・推測が更なる悲劇を招いたケースも
ストーカー規制法が施行されるきっかけになった『桶川ストーカー殺人事件』でも、被害者を悪く言うような論調があったようです。
新宿のストーカー殺人、すっかり「限界中高年男性を騙して金を巻き上げた性悪女が殺された」という語り口になってるが、桶川ストーカー殺人事件のときも、はじめは「被害者はミニスカに厚底ブーツのキャバ嬢で、ブランドバッグを貢がせた相手に殺された」みたいな語り口だったのを忘れずにいたい。
— ワッシュ(鷲羽大介) (@washburn1975) May 9, 2024
他にも、お笑いタレントのスマイリーキクチさんは1988年の『女子高生コンクリート詰め殺人事件』の実行犯として疑われ、長らく誹謗中傷を受けてきました(『スマイリーキクチ中傷被害事件』。中傷した人物1200〜1300人以上の身元を特定、そのうち19人が検挙された)。
西新宿タワマン殺人事件で頂き女子とか自業自得とか糾弾されてますが、憶測で判断してるように感じます。過去の桶川ストーカー事件も大金を貢いだ恨みとか女性に非があるような報道ばかり。実際は全てデマで何の落ち度もなかった。先入観を土台にすると真実を見失います。今は情報から離れるのが賢明。
— スマイリーキクチ (@smiley_kikuchi) May 9, 2024