横断歩道は歩行者優先ルールなので、横断する歩行者がいる場合、自動車は一時停止する必要があるわけですが、実際に信号が無い横断歩道で、一時停止している自動車は半数以下(JAF調べ 2023年)という統計が出ています。
出典:JAF 2023年 信号機のない横断歩道における車の一時停止率(全国平均)
調査方法は『各都道府県ごとに2か所、1箇所につき50回の横断』となっているので、地域差や誤差はありそうですね。全体的に改善傾向にありますが、50~60%ぐらいで停滞しそうな感じですね。
ただ、私が思うに日本人は基本的に真面目なので、わざとルールを破っているわけではないと思うんですよね。実際、(体感上)踏切前の一時停止は9割以上の人がやっているわけですから。
というわけで今回は、『なぜ横断歩道での一時停止ルールを守る人がこれほどまでに少ないのか?』その理由・原因を考察していきます。また、改善案もまとめていきます。
この記事の目次
信号の無い横断歩道での一時停止ルールを守らない自動車が多い5つの理由
それでは早速、信号の無い横断歩道での一時停止ルールを守らない自動車が多い5つの理由を解説していきます。
地域・時間帯によっては一時停止する機会がない
人通りがほとんど無いような地域に住んでいたり、深夜や早朝にしか運転しないドライバーは、横断歩道で待つ歩行者に遭遇する機会がありません。
機会が無ければ次第にルール自体を忘れてしまうのが人間です(厳密には歩行者の有無は常に確認しないといけないわけですが、極端に歩行者に遭遇する機会がなければ、それすらも希薄になってしまう可能性があります)。
例えば、路面電車が走っていない地域の人で、路面電車に関する交通ルールを覚えている人はほとんどいないでしょう。
交通ルールだけではありません。学生の頃に苦労して覚えた数学の公式も皆忘れているはずです。『機会が無くなる』ということはこういう事です。
運転手の裁量に任せた法律であるため
信号の無い横断歩道での一時停止ルールは、ある程度運転手の判断に委ねられています。
これについて解説する前に、横断歩道に関する基本的なルールを説明します。
- 横断歩道を渡ろうとする人がいる場合は一時停止する
- 横断歩道を渡ろうとする人がいないことが明らかな場合を除き、直前で止まれる速度で走行する
以上を考慮して自動車は横断歩道を通過する必要があるわけですが、『~の場合』とあるように、特定条件を満たす場合のみ一時停止や減速の義務が生じるわけです。
ここで問題なのが、特定条件を満たすかどうかを判断するのはドライバー自身という事なんです。つまり、ドライバーの判断能力が低ければ、一時停止・減速すべきところを通過してしまう可能性があるという事なんです。
具体例を挙げると、歩行者が渡るつもりだったとしても、ドライバーが「後ろを向いてたから渡るとは思わなかった」と判断してしまったら、一時停止せずに通過してしまうわけです。
信号に比べて見落としやすい
横断歩道は信号機と比べると目立ちません。
信号機は光源が目に入るので遠くからでも認識出来ますが、横断歩道は光源が無いので遠くからでは認識するのが難しいのです。特に、交通量の多い60キロ制限道路だとより顕著になります。
また、道路整備が行き届いておらず標示が消えかかっていたり、街灯が少なかったりして視認性が悪いような場所も少なくありません。
一時停止が非現実的な横断歩道もある
信号が無い横断歩道の中には「まともに機能させる気がないのでは?」と思ってしまうぐらい非現実的なものもあります。
以下の写真を見てください。
ここは片側2車線(計4車線)の60キロ制限道路で、交通量も結構ある幹線道路なんですよね。
歩行者が横断するには4車線のクルマが同時に一時停止する必要があるわけですが、冒頭に書いたように一時停止する人は半数以下しかいないので、それが4車線分ということですから、非現実的な横断歩道と言えるわけです。交通量の少ない時間帯でもない限り歩行者は渡れないと思います。
サンキュー事故が怖くて躊躇してしまう
一時停止して譲りたいけど、サンキュー事故が怖くて譲るのを躊躇する人もいるかと思います。
例として以下の動画をご覧ください。
横断歩道前で一時停止して歩行者に道を譲ったものの、後続車が横から追い越して歩行者を轢きそうになっています。
親切心で道を譲ったとしても『横断歩道で一時停止する自動車は半数以下』という現実があるため、なぜ前方車両が一時停止したのか理解出来ず、こういった事態になる可能性がとても高いんですよね。
さらに、歩行者も「譲ってもらったから早く渡らないと!」と焦ってしまって周囲の確認が疎かになっています。
こういう光景を目の当たりにしてしまうと、歩行者に道を譲ることを躊躇してしまうのも理解出来ますね…。
信号の無い横断歩道での一時停止ルールを守る自動車を増やす改善案
この状況を改善する策を考えてみました。即実践できるものから、ハードルが高い物まで紹介します。
後続車が追い越し出来ないように幅寄せする
先ほど紹介したサンキュー事故ですが、一時停止する時にセンターラインに寄せるなり、片輪をセンターラインからはみ出して止まれば、後続車は追い越し出来ません。
追い越せるスペースがあったとしても、わざわざセンターラインに寄せて止めた時点で、「何かありそう…」と察するでしょうから、十分抑止になるわけです。
これでサンキュー事故を警戒して、歩行者に譲れなかった人が行動を起こしやすくなるはずです。
人感センサーを設置して歩行者の存在を知らせる
車や人の存在を検知して切り替わる『感応式信号』が昔から存在するわけですが、それと同じ仕組みを信号の無い横断歩道にも取り入れれば、歩行者の存在を認識しやすくなります。
例えば、歩行者がいる場合はランプを点灯させたり、電工掲示板に『歩行者がいます』といった表示をすれば効果的だと思います。
横断歩道には信号設置または一時停止標識の設置を義務付ける
先ほど書いた通り、横断歩道一時停止のルールは『運転手の裁量』に任せたものになっていて、そのせいで一時停止しない人が多発すると考えられるわけです。
だったら逆に運転手の裁量ではなく、強制力を持たせれば解消されるはずです。
踏切と同じく必ず一時停止するよう『一時停止標識』を設置したり、信号機を設置すれば大半の人がルールを守るようになります。
自動車の安全機能を強化
最近の自動車には数多くの安全機能が搭載されていて、例えば、ヘッドアップディスプレイには現在走行している道路の制限速度が表示されたり、車線の逸脱を検知してハンドルを調整してくれたりします。
ここに横断歩道や歩行者の検知機能が搭載されれば、意識せずとも横断歩道での一時停止が行えるようになるはずです(既に搭載されている車種があるかも?)。
ただ、これが広く浸透するにはまだまだ長い年月がかかるでしょう。
家庭用交通シミュレーターを開発して教育する
先ほども書きましたが、『機会が無い』という理由で横断歩道で一時停止する習慣が身に付かない人もいるわけです。
家庭用交通シミュレーターが開発・普及すれば、ドライバーの知識は格段に向上すると思います。
例えば、『グランツーリスモ』を開発するポリフォニーデジタル(ソニー・インタラクティブエンタテインメントの子会社)が国家の援助を受けて開発すれば、かなりのクオリティの交通シミュレータ―が出来るはずです。
- オープンワールド化して1つの都市を丸ごと作る
- 自動車、自転車、歩行者などが現実の交通ルールに沿って行動する
- プレイヤーは自動車、自転車、歩行者好きな立場で行動できる
- 交通ルールを守る or 違反するかで採点され、プレイヤーのレベルが上がっていく
といった感じのシミュレーターをPS5あたりで開発してくれれば、楽しみつつ交通ルールも学べるので、個人的には実現してもらいたいですね。